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江戸庶民が神・八兵衛稲荷神社(東京都新宿区)

日本の神道は人が神として祀られるのが一般的といえます。
菅原道真は天神さま、徳川家康は東照宮など、歴史に名を残した人や激しい怨霊を抑えるためなどがあります。
しかし、江戸の庶民が祀られた神社というのは珍しいかもしれません。

それが八兵衛稲荷神社です。
稲荷社ですから主祭神は倉稲魂命ですが、江戸の庶民だった八兵衛の死後、八兵衛の住居地に八兵衛を祀った神社なのです。

八兵衛は江戸時代初期に現在の新宿区若松町に住んでいました。
江戸といえば火事が大惨事を引き起こした時代です。その八兵衛がある日、自分の過失から火事を出してしまったようです。このことから八兵衛は近隣に迷惑をかけた事を悔い、毎日毎夜町内を「火の用心」「火の用心」と廻って歩くことにしたそうです。
この防火活動が実を結び、若松町には大きな火事がほとんどなくなったといいます。

そして八兵衛の死後、町内の有志が八兵衛に居住地に稲荷神社を建て八兵衛を祀るようになりました。
さらに、この事を伝え聞いた時の町奉行が将軍家に奏上したことで、正一位を贈りました。
庶民からの大出世といえます。

現在は都営大江戸線の若松河田駅が近くにあり、大久保通りの若松町の交差点の裏側に位置するため、参拝しやすい場所といえます。しかし小さな神社で、しかも路地裏のような場所のため、初めての人には分かりにくいかもしれません。