ミニバンの販売台数の一時の勢いは完全に消え失せ、三菱自動車も様々な問題を経て、国内では地味なメーカーとなってしまったことで、シャリオグランディスというミニバンを知る人も少ないかもしれません。
しかし、このクルマこそ日産のプレーリーと並んでミニバンの先駆けといわれたクルマなのです。
もともとは1997年以前にシャリオという車名で販売され、1997年から2003年までのモデルにシャリオグランディスという名称に変化しました。2003年からはシャリオが消え、グランディスとなりました。しかし2009年で国内販売が終了となってしまいました。
それ以外にも当時としてはこのクラス初のインパネシフトを採用したり、全車に2400cc DOHC16バルブ・GDIガソリンエンジンを搭載していたことも特長といえます。
ところで、欧州を中心にダウンサイジングのエンジンが進化してきました
排気量を縮小することで燃費や排出ガス清浄度の改善を図ってきたことで、以前であれば大排気量だったクルマが小さな排気量でも十分に同程度の性能を出すようになってきました。
このダウンサイジングに必須だったのが、直噴エンジン(Gasoline Direct injection engine)とターボといえます。
シャリオグランディスが全車に直噴エンジンを採用したのは、現在から見れば実に画期的だったといえます。
それが三菱自動車が世界に先駆けて量販に成功したGDIエンジンです。
これは電子制御スロットルが採用されているものの、変則的な機構になっていて、スロットルセンサーがアクセルペダルに接続するのではなく、エンジンルーム内にあるというものでした、アクセルペダルからスロットルセンサーの間にアクセルワイヤーが介在する仕組みでした。
ガソリンをシリンダー内に、高圧で直接噴射するエンジンで「筒内噴射」方式と呼ばれるものですが、高圧インジェクターによってノイズが発生してしまうこともあります。シャリオグランディスのGDIエンジンは、そのノイズが大きく、現在のダウンサイジングされたクルマと比較すると、かなり煩いクルマともいえました。
このクルマは初めて所有したミニバンで、かなり思い入れがあります。
それ以前には必要に応じてレンタカーで数種類のミニバンを運転する機会がありましたが、それらとは全く異質なもので、エンジンだけでなくサスペンション、特に後輪が印象的でした。
乗り味が日本車とは思えないほどソフトで、欧州車と対極をなすほどの設置感がありました。
だからといって米国車とも違い、何とも不思議な感じでした。ただ、東京と長野県の飯田市をよく往復していたので、高速道路では快適といえました。さすがに山岳路には向いていなかったですが、当時の満足度はかなり高かった思い出があります。
トヨタのエスティマに乗り換えると、優等生のエスティマに対して、個性的なシャリオグランディスという面が如実に現れていました。そういう意味で誰にでも好かれるものではないものの、ミニバンとして、騒音やメンテナンス、ハンドリング等のマイナス面を考慮しても、独特の乗り味を好む人には最高だったといえるかもしれません。