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大井蔵王権現神社(東京都品川区)

東京の大井町は、JR京浜東北線、東急大井町線、りんかい線が乗り入れる大井町駅を中心にして繁華街が広がります。
電車の利便性が高いまちのため、駅を中心にして雑踏が形成されているといえるかもしれません。

そんな大井町駅から徒歩5分程度の距離に大井蔵王権現神社が鎮座しています。

境内は狭く、いかにも都会らしい小さな神社です。
それでも地元の人たちには親しまれている神社といえます。

江戸時代、江戸の町に火事や疫病が流行っていました。しかしこの地域は災害には無縁でした。
これは、大井村の権現神社の天狗のおかげで無事だったのだということを信じ、人々は天狗に感謝したといいます。
それ以降、人々は天狗に感謝し、権現神社の例祭に太鼓を叩き、天狗を祀った神輿をかついだりしてきました。毎年8月下旬の土・日に大井町駅前で行われる大井どんたく祭りで披露される「大井権現太鼓」もこの神社由来です。

神社としての創建年代は不詳ですが、大井光福寺の縁起には、鳥羽院の皇胤信光の嫡男・頭中将光政が東国に配流になった際、子息のないことを歎いて蔵王権現に誓願したところ、一子を授かったことから、蔵王権現を創建したとなっています。この蔵王権現神社がおそらく相当すると推測されています。

蔵王権現そのものは、修験道の本尊で、正式名称は金剛蔵王権現あるいは金剛蔵王菩薩です。
極めて日本的なもので、起源がインドではなく日本独自の仏です。神社と一体化するのは、日本の歴史そのものに由来しますが、都会の片隅で、蔵王権現の名のついた神社が鎮座していることで、何とも興味深く感じます。