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ネットで復活「弘法倶楽部」

弘法大師伝説をたずねて

弘法大師ゆかりの湯と秘説の湯 山梨周遊編(第3回)

M氏の調べた都留市のうどん屋に突撃します。東京に住んでいる私はいわゆる「武蔵野うどん」が大好きなので、比較するのも楽しみです。

車窓の遥か先に雪化粧した富士山がチラチラ見えるようになってくると間もなく都留市駅に到着。所要時間十五分。都留市は四方を山に囲まれているものの、大学あり美術館あり寺社仏閣ありで結構文化都市の雰囲気がある。

富士急行沿線の中にあってはかなり街の規模は大きい方だろう。時計を見ると十時ちょっと過ぎ。まだ多少朝の空気が残っている。
しばらくぶらぶら歩いていると、突然M氏が「腹が減った」と訴え始めた。何!高尾駅のホームで駅そば喰ってまだ大して経ってないのに!?
通常会社勤めの彼は仕事日の昼食などはあまり食欲がなく、本人曰く「なにを喰ってもあまりうまくない」そうだが、一転旅に出ると異常に腹の減るのが早い。さらに聞くとどうやら転地効果の影響で、胃腸の調子の活性化を促し空腹感を早めるらしいのだ。
非常に分かり易い理屈だが、まったく根っからの旅好きだ。
自分の考えていた予定よりやや早いがまあいいか、私にも多少その気があるのは事実だ。
ということでさっそく例のうどん屋を探すことにする。M氏はあざとくインターネットかなにかで調べたらしい。手持ちの案内地図がえらくいい加減なもので、かなりうろうろする。街自体はいろいろじっくり散策したくなる感じだが、今はうどんへの欲求がすべてを陵駕している。
やがてやっと「あった、ありました!」省みると中心部からはやや離れた、郊外に位置していた。

都留うどん屋『わかふじ』

『わかふじ』という屋号だが、のれんには『手打ちうどん』としか書かれていない。三階建てのビルの一階にあった。時間的にもまだ早いかなあ、とやや危惧するが『営業中』にホッとする。
のれんをくぐると、はたしてお客さんは一人もいない。まあ時間が時間だから当然か。ややシラけた表情のおばさん(おねえさん?)が一人でがんばっている。店内は田舎の食堂という感じ。
お互いに「まずはビールか」とばかりにメニューをみると、うどん以外にはつまみ類も幾つかあったが、煮たまごとか肉とか、要するにうどんの具が流用されているようだ。ただどれも異常に安い。さっそくおばさんにビールとつまみを三品ほど頼むと、笑顔で応じてくれた。実は明るい人柄なのかもしれない。
二人で気分よく飲んでいると、でっぷりした体格の男が入店してきた。あまり気にも留めずに飲んでいると、男が注文したうどんがきたのを見て驚いた。ちゃんぽん皿のごとく皿にうどんが高さ二十センチくらいも盛ってある。
更にすごかったのは、男はそれをものの五分足らずで全部喰ってしまったのだ。すぐ近くに座っていたということもあるが、非常に臨場感があり、二人で目を丸くしてしまった。言ってみればそれだけ「うまい」という憶測もできるので、否が応でも我々のうどんに対する期待は高まったようだ。
しばらくして、ぼちぼちお客さんが入ってきた。見た感じは、どう見ても近所の〇〇さん≠ニいった風情だ。どうやら地元の人たちの看板店的な感じ。
ビール・つまみが一通り落ち着いたので、満を持してうどんを注文する。私が東京の地元でよく食す「肉汁つけうどん」(いわゆる武蔵野うどんの代名詞)と同じメニューがあったので、それでいってみた。M氏も右へならえ。

肉汁つけうどん

うどんが運ばれてきたのは約三分後。飾り気のないざるにドバッと盛られている感じだが薄茶色のうどんが地粉によるものであることを物語る。早速一口食べた瞬間「をっ! うまいっ!」 すごいコシで、ムギュッと噛み締めると歯が押し返される感じ。なじみの深い武蔵野うどんに似ているがなお無骨でコシがつよい。つけ汁は濃厚ないりこの出汁に、先ほどつまみで頼んだもうに薄くスライスした豚肉が入っている。M氏共々替え玉を頼むまでさして時間はかからなかった。
武蔵野うどんもそうだが、うどんの文化が根付くところは必ずその土地や気候の条件(大概はマイナス的な)が共通している。一番大きな共通項は米作に適さないという点である。
例えば、その武蔵野うどんにしても、周辺の土地が関東ローム層であるため保水が悪く、水田には向かない地層だったために、アワ、ヒエ、小麦といった穀類の栽培に活路を見出したことから始まっている。都留うどんにしても同様で、穀物と共に歩んだ食文化が、この無骨なうどんとして今日に息づいているのだと言えるであろう。
しかし非常に安くて美味かった。これから城山温泉に行く時は、こことセットで考えようと思う。

自分が四国出身なので、こっちに出てくるまではいわゆる「さぬきうどん」しか知りませんでした。うどん文化も全国各地によって様々で、美味しかったと同時に大変勉強にもなりました。

次回は富士急沿線の、知る人ぞ知る「隠れ家的温泉宿」に泊まります。



※平成17年発刊の「弘法倶楽部」第3号に掲載されていた記事を、そのままホームページ用に掲載しております。現在とは異なる箇所がございますが、掲載当時のまま再掲載しております。


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