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ネットで復活「弘法倶楽部」

弘法大師伝説をたずねて

弘法大師ゆかりの湯と秘説の湯 山梨周遊編(第2回)

山梨編第2回は高尾駅から富士急線までです。弘法大師の秘説・伝説に迫る前に富士急線沿線の、ある一軒宿の温泉に寄り道いたします。

現在、中央線高尾駅七時五十分。冬で空気が澄んでいることもあり、ホーム上でも既に山の空気を感じる。何度来ても自分にとっては至福の時である。
広大な関東平野もここをもって終わりとし、代わって生まれたての小兵の山達は次第に西方に勢力を広げてゆく。そして上方下方の同じような谷口集落から発生した兄弟達と交わり絡み合いながらやがて奥秩父山塊という巨大な山群を形成するのだ。
谷口集落というのはこう言った山と平野の切れ目に位置する場所であり、大概は山産業(林業や農業の一部など)と近代産業の中継をなす“まち”となる。
同じ東京都では武蔵五日市や青梅がそうで、埼玉県だと飯能や小川町と言うことになる。ここ高尾ももちろんその一つで、たしかに改めてグルリと見渡せば、西側にはすぐに山、東側にはビルやベットタウンが広がっている。その意味ではまさに『脱都会』の出発点といったところだろう。

高尾駅の天狗像

三泊四日の行程もあるので(ここで油断してはいけなかったのだが…)一泊目は弘法大師とは特に関わりの無いところに寄り道することにした。(編集長の顔が怖い)二泊目・三泊目のウォーミングアップとでも言って許してもらおう。
ただ今日行くところは個人的にちょっとこだわりのある温泉宿なのだ。城山温泉という一軒宿。
初めて訪れたのが三年前。もちろん(?)温泉ガイドブック等では殆ど採りあげられていない口コミのみで営業しているような宿で、私は紀行作家の野口冬人が自著の本で紹介しているのが目に留まり、興味を抱いたのが一番最初の発見である。それが初訪して以来すっかり気に入ってしまい今回で既に五回目を数えてしまった。今回は去年の十月以来の来訪となる。
実は今回のこの寄り道には連れがいる。私の友人の一人にM氏という男がいて、まあいわゆる旅仲間である。もうかれこれ十五年の付き合いになるが、ともに旅好き山好き温泉好きということもあり、以来様々な山やいで湯探訪の道連れとなった。
単独で自分の気に入った所を行き当たりばったりで旅するのが好きな男で、私もどちらかと言うと単独放浪が好きな方なので、双方の嗜好が一致した時に同行の友となるようだ。たしか一週間程前に彼と一杯ひっかけた時に今回の弘法倶楽部の企画の話が肴になってしまった。
城山も下部も一度彼と同行したことがあり、相当興味を示したようだったが、双方共さすがに全行程というわけにはいかず「城山は寄り道だから来てもイイぜ」ということになった次第。
甲府行き普通電車は八時十五分発。ウイークデイにもかかわらず、車内は沿線の冬枯れの山を目指すハイカーでいっぱい。

沿線は千メートル前後の低山が多いので、夏場よりむしろ空気の澄んだこの時期のほうがかえってシーズンといえる。晴れていれば、富士山はもちろん、遠く南アルプスまで望むことができる。逆に夏場はガスって展望はきかず、また藪コギや虫の襲撃と仲良くすることになる。まあそれもまたヨシだが…。
高尾から中継地の大月までは約三十分。高尾を出た普通電車はすぐに山間部に突入しトンネルの連続となる。しばらくして相模湖を過ぎると、中央線は緩やかな山肌を河に沿って走る。いつも見慣れた光景だがやはりイイもんだ。

M氏もこのところなかなか旅の機会に恵まれずいささか禁断症状気味だったようで一気の開放感を味わっている様子。八ヶ岳山麓の奥蓼科温泉郷、福島の湯岐、秋田の泥湯などかつて訪ねたいで湯の話で盛り上がる。なんだか一週間前の飲み屋での話しの繰り返しのようでもあるが、環境が変わるとまた楽し、である。
登山家の山村正光が『中央線各駅登山』というような本を著しているくらいだから、大月の手前の猿橋を過ぎた頃には、半分くらいのハイカー客は、各々の目的の山を目指して降りていった。大月着は八時四十五分。

大月駅

大月駅はログハウス風の趣のある駅舎で山の中のターミナル駅の風格充分。駅の裏側には岩殿山がデンと鎮座している。岩殿山はかつて戦国武将小山田氏の居城であり要害の地として馳せ、今でもその遺構がかなり残っている。
標高は五百メートル程度の低山であるが、適度にスリリングな岩場があり展望もすばらしいので、富士百景にも選ばれハイカーにも人気がある。
私も登ったことはあるが、どちらかと言うと、こんもりした御椀を伏せたような山容がなにか町を見守っているようでもっぱら下から眺めるほうが好きだ。

ここからは富士急行に乗り換え都留市方面に向かう。本日の目的地、城山温泉は都留市駅の一つ先の谷村町駅が最寄だが、時間も早く散策するにはいい距離なのでとりあえず都留市駅で降りることにする。M氏曰く「都留に行きたいうどん屋がある」そうだ。B級グルメを自称する彼に期待し、結果こっぴどく裏切られたケースが過去幾度となくあったので、あくまでも冷静について行こうと思う。
大月駅を出た富士急行線普通電車は、富士山を目指してぐんぐん高度を上げていく。大月が標高三百五十八メートルに対して終点の河口湖は標高八百五十七メートル。
約二十六キロの間で五百メートルも登ることになり、かなりの勾配で、JR最高地点を走ることで知られる小海線にも勝るとも劣らない山岳鉄道といえる。車窓に目を移すと田んぼや畑は少しずつ段をつくり、道はわずかに右肩上がりになっているのが「登ってるんだぜ」と主張しているかのようだ。

次回は都留市内にある「つるうどん」の店を訪ねます。
なかなかよい店でした。



※平成17年発刊の「弘法倶楽部」第3号に掲載されていた記事を、そのままホームページ用に掲載しております。現在とは異なる箇所がございますが、掲載当時のまま再掲載しております。


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